自転車雑誌、バイク専門書、バイクビデオ類を査定

普段は自転車にあまり関心がなかった著者が、ひょんなことから電動アシスト自転車を手に入れ、そこからロードバイクを愛用するようになり、旅と冒険の幅を少しずつ広げていく日常を描いたエッセイ集です。

本書の構成は「はじめに」から「おわりに」「あとがき」に至るまで、およそ十章の物語風エピソードと、「自転車メモ」と称されるコラム的挿入部分で構成されます。序盤では電動アシスト自転車を選ぶまでの葛藤や、都内・横浜での街なかライド体験がつづられています。著者の日々の心情と風景を丁寧に織り交ぜながら、慣れない道、坂道、雨、パンク、体力の限界などの困難にも触れられており、「できないことの積み重ね」を少しずつ乗り越えていく過程が描かれています。中盤以降は、ロードバイクへの移行、神奈川県内でのライド、真鶴往復の150km挑戦、さらには北海道・苫小牧・支笏湖方面への旅へと至るエピソードがあります。

著者は旅の道中での不安や恐怖、予期せぬ天候変化、体力の限界といった現実的な壁に直面しながら、それでも前へ進む気持ちを丁寧に描写しています。 インタビューで著者が語るところによれば、自転車に乗り始めたのは「自分には必要ない」思い込みを持っていたからこそで、その偏見を壊すきっかけとして電動アシスト自転車の力を実感した体験が重要な転機だったとのことです。 著者は自分自身を「運動苦手」「根気が続かない人間」と位置づけながらも、自転車という乗り物を通じて「自分の限界」を更新していく軌跡を読者に見せています。 読者の感想として、「電動自転車のきっかけからロードバイク熱に至る過程に共感する」「自転車旅への憧れを抱かせてくれる」「著者の弱さと挑戦の両面が魅力的」といった声が目立ちます。

本書は発売後に重版もされており、読者層や評判の裾野が拡がっていることが確認できます。 このエッセイは単なる自転車趣味の語りではありません。日常生活に違和感を持ち、「自分には無理かもしれない」と思っていた人に対して、「ほんの一歩」を踏み出す勇気や、自分を少しだけ広げていく喜びを伝える作品です。自転車に親しみがある人にも、これから関心を持ち始めたい人にも、内面の葛藤と外の世界との橋渡しを感じられる一冊と言えます。

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