ペーパーバックや洋雑誌や洋書等を査定

John K. Ousterhout氏によるソフトウェア設計に関する実践的洞察を凝縮した書籍です。著者がソフトウェア設計の核心と位置づけるのが「複雑性」です。本書では「複雑性とは理解や変更を困難にする要因」と定義されており、変更を加える箇所が多岐にわたることや認知負荷の高さ、どこを修正すべきか分からない状況などを複雑性の症状として挙げています。それらを生み出す原因として依存関係や情報の不透明さを指摘し、それらを緩和するための設計戦略が本書の主軸となっています。

本書が強く提唱する手法の一つが「深いモジュール」の設計です。これはインターフェースが複雑さを吸収し、利用者にとっての心理的負担を軽減する構造を目指す概念です。対して「浅いモジュール」は使い勝手に対する見返りが少ないとし、頻繁に依存し更新する状況下では意図的な抽象化が必要だと説いています。

読みやすさを意識した構成にも特徴があり、全22章程度、180ページ前後とコンパクトです。各章は短く区切られており、見出しや太字によって導線が整備されています。そのため気軽に拾い読みも可能です。ただし後半ではテストの重要性や命名規則に関する説明がやや省略気味との指摘もあり、単独で全体の設計を網羅するには補完的な参考書が必要ともされています。

書籍には「Red Flags」と呼ばれる設計上の警告リストが紹介されており、モジュールが浅い場合や情報が漏れている場合など、複雑性につながる典型的なパターンを示しています。このような思考ツールを通じて自らのソフトウェアを振り返る習慣が促されます。

本書第2版では新章「Decide What Matters」が加わり、重要な要素とそうでないものを切り分ける思考が強化され、一章「GeneralPurpose Modules are Deeper」が改訂され、全体を通して設計概念の精緻化が図られています。クリーンコードとの比較や相違点も明示され、著者自身による解説が補足されており、初版所有者にも有用な内容となっています。

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