経済雑誌やセミナーCDや経済入門書や資格DVD類を取扱

社会・環境課題の解決に「意図」を持って金融を活用するという考え方を整理した1冊です。監修を水口 剛氏が務め、著者としては金融機関などが加盟するイニシアティブである インパクト志向金融宣言 が名を連ねています。発行元は 金融財政事情研究会 です。書籍の構成・内容から、金融専門家・サステナビリティ推進担当者・研究者にとって示唆の深い内容となっています。

本書はまず「インパクトファイナンスとは何か」という序章で、注目が高まった背景、市場規模の急激な拡大、定義などを解説しています。具体的には、「なぜ今、インパクトファイナンスなのか」「インパクトファイナンス市場は4年で34倍に」というデータに触れており、拡大期を迎えたテーマ性・市場環境を丁寧に論じています。第１章ではインパクト志向金融宣言という協働イニシアティブの立ち上げから動き、金融機関が新たな役割として社会・環境インパクトを追求する挑戦について記されています。金融機関がこれまで果たしてきた「貸す・運用する」という役割を超え、どのように「変化を生み出す」役割を担うのかという視点が展開されています。第２章には国内外におけるインパクトファイナンスの潮流や、関連する原則・フレームワーク、さらには日本の特徴や国際比較の観点がまとめられています。「IMM」の概念もこの段階で登場し、金融活動と社会・環境変化との接点が具体的に論じられており、本書ではその「実装」について第３章でさらに突っ込んで扱っています。第４章が見どころの一つで、16件におよぶケーススタディが紹介されています。未上場株式、上場株式、融資、債券、地域金融など幅広いアセットクラスにおける金融機関の実践が並びます。たとえば、未上場株式では キャピタルメディカ・ベンチャーズ の取組み、上場株式では かんぽ生命保険・コモンズ投信 など、地域金融としては 京都信用金庫・肥後銀行 の例が挙げられています。これらは、理論だけではなく実務の現場でどのように仕組みを構築し、インパクトを測定し、金融リターンと社会リターンの両立に挑んでいるかを読み取れるよう設計されています。 第５章では、インパクトと財務的リターンの関係や、システムレベルの思考・投資、金融機関間・領域間の「連携」の重要性といった、発展に向けた課題が整理されています。終章では「インパクト志向金融が描く未来」というテーマで、金融全体の再定義や、社会変革を金融がどのように支えるのかといったビジョンが示されており、金融の役割を問い直す契機になる内容です。

この書籍は、金融機関の業務に携わる方だけでなく、企業のサステナビリティ部門、NGO／NPO、そしてインパクト投資に関心を持つ学生・研究者にも学びある内容です。特に、国内の金融機関が協働してインパクト追求に組織をあげて取り組んできた変化や、そのプロセスを可視化している点において貴重な情報と言えます。読後には、従来の「金融＝リスクとリターン」の枠を超えて、「金融＝変化を創る力」という視点を得ることができます。

ビジネス書、自己啓発DVD等の買取について

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