ディープハウスやハードスタイル等が査定可能

ダンス／エレクトロニック領域で話題を集めたアルバム「I’ve Got My Eye on You」です。匿名性を保ったプロジェクト名 Syclops によるもので、実質的には英イングランド・シェフィールドを拠点に活動するプロデューサー Maurice Fulton が手がけたとされます。 アメリカのインディー／ダンス系レーベル DFA Records から2008年に発表され、既存のクラブ音楽的文脈を越える試みとして評価されています。

ファンク、ディスコ、ハウス、ジャズ・フュージョン、エレクトロニック・ミュージックなどをクロスオーバー的に融合しています。音像としては「ロボ・ファンク」と評された精緻なリズム・トラックと、ライブ楽器を思わせる演奏感のあるパートが混在しており、機械的なシンセ・リズムと温度感ある演奏部が絶妙に絡み合っています。 例えば冒頭トラック「NR17」では、打ち込み的なパーカッションと低域が緊張感を醸し、続く「The Fly」ではモールス符号のようなシンセ・フレーズが歪んだベースと交錯します。 また「Where’s Jason’s K」では、ハービー・ハンコックの「Thrust」期を思わせるベース・リフとシンセのレイヤーが展開されており、ジャズ・フュージョン的なアプローチも感じ取れます。

Syclopsという名称は、表向きにはフィンランド人３名によるトリオという設定になっていますが、実質はMaurice Fultonによるプロジェクトであるという見方が定着しています。 Fulton は過去にアニー、ホット・チップ、キャシー・ダイアモンドらのリミックスやプロデュースを行っており、クラブ／ダンス／エレクトロニック界隈では「ミステリアスで実力派」として知られています。 この作品も「誰が演奏しているか」より「如何に聴かせるか」にこだわった音作りが行われ、インタビューなどを極力避けた姿勢もその神秘性を高めています。

アルバムには「NR17」「The Fly」「Naoka’s F」「5 Out」「Nelson’s Back」などのトラックが収録されています。 中でも「The Fly」は緊張感とエレクトロニック・ファンクの融合が鮮やかで、クラブ用途だけでなく「ヘッドフォンでじっくり聴く」アルバム体験としても高く評価されています。 またラスト近くの「A Lovely Sunday」では静かに展開するコード進行にガーファンクル的ホイッスル風シンセが忍び寄るなど、静と動のコントラストも印象的です。

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