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井原忠政による歴史時代小説で、双葉社から2024年に文庫版として発売されました。「三河雑兵心得」シリーズの第14作目として位置づけられており、戦国時代を舞台にした緻密な物語構成と豊かなキャラクター描写が特徴です。

物語は、太閤秀吉の伏見城の落成とその祝賀行事を背景に開始されます。秀吉は京の民を集めて自ら餅を撒き、盛大に祝いますが、祭りの最中、凶悪な盗賊石川五右衛門が三条河原で極刑に処されるという凄惨な出来事も描かれています。こうした背景には、秀吉の政治的な動きや野望が影を落としており、彼の行動が次第に過激化していく様子が描かれています。

一方で、主要人物の一人である茂兵衛は、徳川家康からの命を受けて鉄砲百人組を引き連れ、東海道を進んでいる途中で敵の襲撃に遭います。当時の戦国武将たちの生き様や、彼らの戦いのリアリティを鮮明に描き出しており、読者に深い印象を与えます。

井原忠政はこのシリーズを通じて、戦国時代の激動の中で生きる人々の心情や社会的背景を丁寧に描き出し、その歴史的文脈と個々の人物の心理描写には定評があります。特に、政治の裏で動く人々の生活や、大名たちの野望とそれに伴う人々の苦悩がリアルに描かれており、その歴史認識の深さと物語性の高さが評価されています。

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