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10世紀後半に成立した歌物語で、日本文学における重要な作品の一つです。173章から構成されるこの物語は、王朝時代の貴族社会における噂話や恋愛逸話、歌に関するエピソードを集めたものです。特に「あはれ」という美しい情感が強調され、王朝文学の繊細な感性が反映されています。これらの物語は、後の「源氏物語」や「枕草子」などにも影響を与え、日本の叙情詩としての地位を確立しました。

この作品の編集者である雨海博洋と岡山美樹による全訳注版は、講談社学術文庫から2006年に出版されており、文庫版としては初めての全訳注が施されています。翻訳と注釈は、作品の理解を深めるために詳細に行われ、読者が文学作品の背景や語句の解釈を容易に理解できるように配慮されています。文学研究だけでなく、一般読者にも古典作品の魅力を伝えるための入門書としても機能しています。

また、「大和物語」はその文学的価値に加えて、文化史や社会史の研究においても重要な資料とされています。貴族たちの日常生活や人間関係、文化活動が生き生きと描かれており、平安時代の社会構造や価値観を今に伝える貴重な窓口となっています。読者はこれらの物語を通じて、当時の人々の生活や思想、感情の表現方法に触れることができます。

このような背景から、「大和物語 上」は日本の古典文学を学ぶ上で欠かせない一書と言えます。

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