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題材とあらすじ 主人公・立花喜久雄は長崎の極道の家に生まれ、15歳のとき抗争で父を亡くして天涯孤独になります。歌舞伎の稀代の女形としての美しい才能を見出された喜久雄は、上方歌舞伎の名門当主・花井半二郎に引き取られ、歌舞伎役者としての道を歩み始めます。育ての父・半二郎の実の息子である俊介とともに弟子として、ライバルとして成長を競い合い、芸の厳しさ、美の追求、自己との葛藤に向き合うことになります。ある日、半二郎が入院した際、自身の代役を俊介ではなく喜久雄に任せるという決断が起き、それを契機に喜久雄と俊介の関係や運命が大きく揺れ動くことになります。

キャストと役柄 喜久雄を演じるのは吉沢亮。俊介役は横浜流星。育ての父・花井半二郎には渡辺謙が扮し、その妻・幸子役を寺島しのぶが担います。その他、高畑充希が喜久雄の恋人・春江、森七菜が彰子などを演じ、役者陣の豪華さ、歌舞伎の衣装・セット・演技指導の本格性が注目されています。

監督・制作背景 李相日は1974年新潟県生まれ。「フラガール」「悪人」「怒り」「流浪の月」などで知られる実力派監督です。「国宝」では「歌舞伎役者ではなく、歌舞伎役者に身を賭した人間」を描きたいという思いのもと、原作小説の深さ・歌舞伎界の裏側・主人公の内面への取材を重視して制作がなされています。原作者の吉田修一は歌舞伎の楽屋に3年以上入り、黒衣としての経験なども重ねた上でこの物語を書き上げており、その現場感が作品に力を与えている点がしっかり反映されています。

テーマと魅力的要素 血筋と才能、家族・師弟関係・友情・恋愛・葛藤・挫折、といった人間ドラマの要素を歌舞伎という伝統芸能の厳しくも美しい舞台を背景に展開しています。歌舞伎の稽古、舞台メイク、着物や立ち振る舞いなどのビジュアル／演技の細部にわたるリアリティ、主人公が「世界でただ一人の存在＝国宝」として評価されようとするまでの道のり、その中でどれだけ自分の美と苦悩を引き受けるかという問いかけがあります。出演者たちは歌舞伎経験者ではないものの、本番における立ち回りや所作を徹底して練習しており、その姿勢も作品の迫力につながっています。

鑑賞する際のポイント 美術や衣装、舞台美の演出に目を向けることが鑑賞を深める鍵になります。主人公の内面の変化、特に能力と環境との折り合い、血筋の重み、師匠と弟子の複雑な関係をどう乗り越えていくかを観察すると、多層的な物語として味わいが増します。音楽や映像のトーン、美しい舞台の照明や背景構成なども、日本伝統芸に対する敬意と現代映画としての表現性の両立が意図されている部分として注目できます。

ひとりの歌舞伎役者としてだけでなく、人間としての存在、所属する家系や師匠／師弟、社会的な立場、美への渇望も併せて描いた作品です。主人公の喜久雄は最終的に「国宝」に到達する姿を通して、観る者に伝統芸能の内側にある光と影を感じさせる力を持っています。

パンフレット等の買取について

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