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まず東京・銀座の 歌舞伎座 が「第五期」となる新築移転・開場を迎えるまでの約３年間にわたる建築過程、そしてそのこけら落としに挑む歌舞伎界の俳優たちの姿を、丹念に追った映像作品です。 建築家・舞台照明など、劇場を支える技術・職人たちの苦労と情熱も併せて描かれています。劇場が「世界に誇る伝統芸能の新たな舞台」として再出発する慶事と、歌舞伎界が戦略的に挑むこけら落とし興行を軸に、俳優の稽古・顔合わせ・舞台本番までを掘り下げており、建物そのものの魅力だけでなくそこに集う人々のドラマが浮かび上がります。

次に見どころです。ひとつ目に、歌舞伎座の「舞台」そのものの構造・仕様の刷新ぶりが映像で見られる点が注目です。例えば、廻り舞台の径・舞台下の奈落・舞台袖の広がりなどが改良されており、舞台転換などの機能性も向上しています。 ふたつ目に、劇場の客席構成・観劇環境が大きく進化している点も見逃せません。客席の勾配を急にして舞台が見やすくなったり、座席幅・前後間隔をゆったりさせたり、バリアフリー設備を備えたりしています。 みっつ目に、建築技術的には伝統的様式を踏襲しながら、最新技術・構造を融合させているという点です。設計では「記憶の継承」をキーワードに、建造物としての耐震性・環境対応・利便性も強化しています。

次に背景です。歌舞伎座は、明治22年に初代として開場して以来、幾度か建て替えや焼失を経験し、2013年4月2日に新たに「第五期」となる建物が開場しました。 新開場の興行「柿葺落興行」が1年間にわたり行われ、歌舞伎界にとって重要な転機となりました。 また、建物自体は劇場部分に隣接して高層オフィス棟「歌舞伎座タワー」を併設する複合施設として設計され、地上29階地下4階構造で、「伝統とモダン」を併せ持つ街のランドマークになりました。 ドキュメンタリーでは、こうした「劇場を取り巻く空間」「歌舞伎を支える舞台裏」「構築・開場の舞台裏」が丁寧に描写されており、歌舞伎鑑賞者が舞台を観る「場」としての劇場にも改めて興味を持つ契機となる作品です。

単に歌舞伎俳優の演技を記録したものではなく、劇場という空間そのものがどのように築かれ、歌舞伎の「今」をどう支えていくかを描いた、舞台芸術の周辺領域に光をあてた点が特に価値と感じられます。歌舞伎を愛する方だけでなく、舞台芸術・劇場建築・文化継承に関心のある方にも深く響く内容だと思われます。

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