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このＣＤではロシア・ロマン派の代表的ピアノ協奏曲２作を収録しており、演奏・録音双方に注目すべき点が多くあります。まず作曲作品について整理します。１曲目は ピョートル・チャイコフスキー／ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23 です。チャイコフスキーが１８７４年から翌年にかけて創作し、鮮烈な第１主題と広がりあるオーケストラ伴奏が印象的な作品としてクラシックのレパートリーで重要視されてきました。２曲目は セルゲイ・ラフマニノフ／ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18 です。ラフマニノフが19001901年にかけて作曲し、自身の創作再起の象徴とみなされており、美しい旋律と深い情緒を備えた名作です。

演奏家・オーケストラ・指揮者の組み合わせも特筆に値します。ピアノ独奏には スヴャトスラフ・リヒテル が登場し、その深遠かつ技巧的なタッチはこのＣＤでも遺憾なく発揮されています。特にラフマニノフ第２番の演奏は、「鍵盤の英雄」と称されたリヒテルの代表録音の一つとして挙げられています。 指揮・オーケストラの面では、チャイコフスキーでは ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮 ウィーン交響楽団 が、ラフマニノフでは スタニスラフ・ヴィスロツキ 指揮 ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団 がそれぞれバックアップしています。録音はいずれも１９５９年および１９６２年とされており、その時代ならではの暖かみと音響の残響感を感じさせる音質です。

このＣＤを聴く際のポイントとして、第一に曲間の対比が非常に鮮やかである点が挙げられます。チャイコフスキー第１番ではピアノ冒頭の重厚な和音とオーケストラ冒頭のファンファーレが聴きどころで、ここでリヒテルが繊細と強靱さを同時に示しています。第二にラフマニノフ第２番では、静謐な導入部から徐々に色彩豊かな展開へと移行し、その旋律美とオーケストレーションの豪華さを丁寧に描いています。レビューでは「リヒテルが沈思黙考しながらも強烈なピアノ語法を発揮している」とされています。

録音仕様・聴きどころとしては、ソリストとオーケストラのバランスが良好で、古めの録音ながらダイナミックレンジの広さを感じさせる音世界です。特にピアノの音像が明確に定位しており、リヒテルのペダリングやタッチのニュアンスが浮き彫りになるようミキシングされています。加えて、両作品とも「聴き手を惹きつける出だし」を持っており、休日の午後などじっくりと聴くには最適です。

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