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マウリツィオ・ポリーニによるモーツァルトのピアノ協奏曲第19番と第23番を収録した作品です。まず第19番は1784年末に完成されたもので、モーツァルト自身がピアノを担当した可能性も高い演奏用作品として知られています。 第23番は1786年3月に完成、三楽章構成で典型的な古典派ピアノ協奏曲の形式を備え、ア・メジャーの美しい調性も特徴です。

演奏者ポリーニは、20世紀後半から21世紀初頭にかけての名だたるピアニストで、高度な技術と洗練された解釈力を持ち味としています。 この録音においても、卓越した技巧と繊細なフレージングにより、モーツァルトの協奏曲の魅力が新たに表出されている点が高く評価されています。例えばあるレビューでは「聴く者に媚びず、計算された制御のもとに演奏された秀逸な録音」と述べられています。

このＣＤの特色として、第19番では木管とピアノの対話が豊かで、たとえば冒頭のオーケストラによる序奏からピアノが静かに入る形式を用いており、フルート・オーボエ・バスーンらとのやりとりが仲睦まじい雰囲気を醸している点が挙げられます。 第23番では第2楽章のアダージョが特に歌心に富み、モーツァルトのオペラ的感性を窺わせる劇的な側面を秘めている演奏として知られています。

ポリーニの解釈は、速度やダイナミクスにおいて派手な装飾を排し、むしろ構造の明晰さと音楽の内的均衡を重んじるスタイルです。そのため、モーツァルトの協奏曲における「ピアノとオーケストラの対話」「古典的構成の中の即興性」の魅力が際立って聴こえます。オーケストラの伴奏を引き立てつつ、ピアノが絶えず変化をもたらす役割をきちんと担っており、協奏曲形式の面白さを理解する上でも優れた一枚です。

併せて、この録音を聴くことでモーツァルトの協奏曲の歴史的前後関係にも思いを巡らせることができます。第19番はモーツァルトが比較的若い時期に手掛けたものであり、木管群との協働が活発です。第23番はその数年後に書かれたもので、形式的にも構成的にも成熟を感じさせます。それぞれを聴き比べることでモーツァルトの創作の変遷を体感できます。

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