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ピアニスト メナヘム・プレスラー がフランス印象派から次世代の雰囲気を持つ作曲家までを網羅した、「月の光ドビュッシー、ラヴェル、フォーレ：作品集」というタイトルのソロ・ピアノ作品集です。演奏・録音ともに成熟の境地にあるプレスラーが、静謐かつ深い音楽世界をひとりで展開しています。録音は2017年4月にパリで行なわれました。

収録されている作曲家には、まず クロード・ドビュッシー が含まれます。彼の印象派音楽の代表的作品群を、「アラベスク第1番」「夢想」「月の光」「小さな羊飼い」「レントより遅く」、さらに 前奏曲集 第1巻から「デルフィの舞姫」「ヴェール」「亜麻色の髪の乙女」「沈める寺」「ミンストレル」などが並びます。 これらの作品では、ドビュッシーが探求した光と影、月明かりのような繊細なハーモニーと色彩感が浮き彫りになります。プレスラーはこの微妙な色彩を、決して過度な解釈に走らず、むしろ時間をかけて育まれた深みによって描出しているという評価があります。

次に ガブリエル・フォーレ の「舟歌 第6番 変ホ長調 作品70」が収録されています。フォーレはドビュッシーやラヴェルに先立つ世代ながら、フランス音楽の流れを創出した重要な作曲家です。 その作品は洗練された静けさと内的抑制が特徴で、このＣＤではドビュッシーから続く「内省的で透明な美」の連なりの中に位置づけられています。

最後に モーリス・ラヴェル の「亡き王女のためのパヴァーヌ」「悲しげな鳥たち」が収められています。ラヴェルは色彩的なピアノ作品で知られ、月明かりや夜の静寂といったイメージを音で描く達人でもあります。プレスラーの演奏ではその抒情性や構築の美しさが静かに顕れ、評論では「音の録りも極めて優秀で、プレスラーの余裕ある構想とディテールへの配慮を見事に補う」ものとして高く評されています。

プレスラー自身について少し触れると、彼は長年にわたり室内楽の名手としても活躍し、その穏やかで豊かな音色、そして万年ベテランであるがゆえの「時間を経た演奏」の説得力を備えています。この録音時点で年齢を重ねており、その年月がもたらす余裕が本作には色濃く反映されています。

音質・収録ともに丁寧に仕上げられており、評論家は「記録された音がまさに素晴らしく、プレスラーの構想の広さとディテールへの配慮に完璧に応えている」と述べています。 聴き手は、繊細なタッチや緩やかなテンポの中に漂う空気感、そして音が空間に溶け込んでいくような感覚を体験できる構成です。

伝統的な名曲ばかりではなく、その演奏者の人生と経験、その音楽観がしっかりと作品に刻まれた録音である点が特筆すべき特徴です。プログラムの統一感も高く、「月の光」というタイトルにふさわしく「夜・静寂・影」というキーワードが演奏全体を貫いています。演奏者のキャリアに裏打ちされた深みと、馴染み深い名曲を新たな視点で聴ける贅沢さがあります。

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