ヘヴィメタルDVDやヘビメタDVD等をすぐ査定

ハードロック／ヘヴィメタルの要素を色濃く残しつつ制作陣と音楽的幅を拡張した作品です。トラックリストには「Bing」「Mad Hatter」「Change of a Season」「Hold On」「The Storm」「Ride on a Dream」「Good With the Bad」「Backdoor」「Secrets」「Los Locos」「Chimera」といった楽曲が収録され、全体の演奏時間は約57分44秒となっています。

制作に関しては、前作とは異なりBob EzrinではなくTony PlattおよびRon Saint Germainがプロデュースを担当し、音の解像度と鮮明さが増した印象です。タイトル曲「Mad Hatter」ではTower of Powerによるホーンセクションが宿るファンク的なアプローチが試みられ、これまでのLed Zeppelin的影響から脱却しようとする姿勢が窺えます。

楽曲ごとには非常に多彩な音楽性が見られます。「Bing」は初めこそ古典的なツェッペリン調のリフで始まりますが、サビではまったく異なる方向へ転じます。「Change of a Season」はメランコリックなバラードで荘厳なコーラスとシンセストリングスが印象的となり、1992年当時のグランジ全盛期という音楽潮流とは異なるアプローチが感じられます。「Hold On」ではファンク、ソウル、プログレ、ブルース、さらにはブルーグラスの要素までも融合させた多層構造が展開されます。

ジョン・スミスソンによるギターとヴァイオリンが暗やかなピアノと共に情感的なインストゥルメンタルとして響き、「Chimera」は明るいアップビートな楽曲で締めくくられます。全体としてBonhamとしてのツェッペリン由来のDNAを残しながらも、より広い音楽的表現に挑んだ意欲作であることが読み取れます。

個々のメンバーでは、ボーカルにダニエル・マクマスター、ギターにイアン・ハットン、ベース／キーボード／ヴァイオリン／コーラスにジョン・スミスソン、ドラムにジェイソン・ボーナムが参加し、それぞれの演奏とアレンジがアルバムの個性に深みを与えています。

グランジ台頭期と時期が重なり相対的に注目度は低かったものの、サウンドの明晰さや多ジャンル融合のアプローチ、そしてバンドとしての成長と試行が記録された作品であることは確かです。音作りの変化と楽曲構造の多様性を注視すると、このアルバムがBonhamの創造の幅を示す重要なターニングポイントであることが浮かび上がります。

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