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プロレスラー・蝶野正洋が自身のキャリアを振り返りながら、表舞台では語られない「事件」の裏側にも踏み込んだ一冊です。「プロレス名勝負とあの事件の裏の裏」というタイトルは、蝶野がこれまで対戦してきた試合の名勝負の裏側にある思いや葛藤、対戦相手との関係性、そして何らかの「事件」と称される出来事を、時間が経った今だから話せる視点で語る構成を表しています。

蝶野自身がタイトル・発売日を自身の62歳の誕生日に合わせて発表している点も注目されます。公式サイトでは「忘れることのできない名勝負を改めて振り返りながら、試合直後ではなく、時間が経った今だからこそ気づいたさまざまなあんなこと、こんなこと……舞台裏をとことん語り」 としており、従来の回想録よりも踏み込んだ内容を期待させます。

単にスコアや技術論を列挙するのではなく、蝶野自身の感情や心理、試合後に意識したこと、相手選手との駆け引き、そのときには見えなかった事情を通して再解釈する方向が想像されます。もうひとつの焦点である 「あの事件」 という語が示すのは、プロレス界で論議を呼んだ出来事、内部の舞台裏、スキャンダルや対立、さらには業界の慣習や闇の部分を指しています。蝶野のキャリアは新日本プロレス、nWo Japan、TEAM 2000 など複数の団体やムーブメントを経験しており、それらの組織運営、対抗抗争の内幕、選手間の軋轢に絡む 「事件」 を本人がどこまで語るかがこの本の目玉になります。

蝶野という人物のプロとしての戦い、内情への踏み込み、プロレス界という舞台の光と影を、一人称視点で描こうとする挑戦性に価値があります。これまで噂や断片的な語られ方しかなかった「事件」の向こう側を、蝶野自身がどう言葉にして紡ぐかが本書の核心になると言えます。

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